日本の労働生産性が低いことを指摘しましたが、そもそも労働生産性とはどのような指標を見ればいいのでしょうか? 改めて労働生産性の定義について解説します。まずは基本的な生産性については下記で表せます。
生産性=産出(アウトプット)÷投入(インプット)
有形無形問わず商品やサービスをつくる際に、設備、土地、建物、エネルギー、人件費がかかります。これらを生産要素と呼び、投入した生産要素によって得られる産出物の割合が生産性となります。投入量を低くして、産出量が増加すると生産性が高くなります。
生産性でも様々な指標を確認することで、それぞれ異なる事実が見えてきます。どのような生産性指標があるのか、解説します。
物的生産性と付加価値(資本)生産性
生産性は、さらに物的生産性と付加価値(資本)生産性の2種類に分けられます。基本的な計算式は上記の通りになりますが、産出と投入の値によって指標が変わります。
物的生産性は、労働の視点から産出した数量で、「生産量÷労働者数」の計算式では一人当たりの産出量を導き出せます。一方で、「付加価値額÷労働者数」の計算式ですと、一人当たりの産出額を導き出せます。さらに計算は複雑になりますが、全要素生産性(TFP)といった指標もあります。
その他の生産性の指標
その他、生産性を表す指標はいくつかあり、ここでは財務視点でモニタリングすべき指標を紹介します。
労働分配率
付加価値額のうち給与などの人件費が占める割合を示します。「労働分配率=人件費÷付加価値額×100」の計算式で、高すぎると人員過剰になっている可能性があり、人的資源の最適な配分などを検討する必要があります。一方で、低いと従業員の待遇が悪い可能性が生じます。あくまで複数の指標とともに評価していき、自社の状態を分析するのが良いでしょう。
有形固定資産回転率
労働分配率は、人的資産に対する生産性を表す一指標ですが、有形固定資産回転率は、建物、土地、設備投資などが効率的に活用できているかの指標となります。
「有形固定資産回転率=売上高÷有形固定資産×100」の計算式となり、この数値が高いほど設備の生産性が高く、有効に活用できていると言えます。
労働装備率
従業員一人あたりに対する設備投資額を見る指標になります。「労働装備率=有形固定資産÷従業員数×100」の計算式となっており、この数値が高いほどIT〜デジタル機器の活用や各種設備が行われていると言えます。業界によって大きく数値は異なりますので、一人当たりの設備投資を見ながら、有形固定資産回転率もチェックして効率よく活用できているかを分析すると良いでしょう。
その他、生産性にまつわる財務指標
その他の財務指標で生産性や企業の稼ぐ力として見られる指標にROA、ROE、ROICなどがあります。投資家向けの指標であり、財務の専門的な分野となるので詳しい言及は避けますが、経営状態の把握や生産性を確認する指標として用いられます。
生産性は多角的に分析することが重要
生産性にまつわる指標を紹介しました。これらの指標は、自社の状態を把握するために用いられ、分析することで課題抽出ができ、改善するターゲットも定められます。例えば、一人当たりの労働生産性が低いので設備投資をしたが、有形固定資産回転率が悪いとなると、原因は導入したツールやソリューション、機器などが現場で有効活用されていない、という仮説が立ちます。
一概に労働生産性といっても業界、業種ごとに数値は大きく変化しますので、多角的に分析することで課題を抽出できるでしょう。