まずは過去に世間を震撼させた海外の大規模な情報漏えいの事例を紹介します。
7000万件の個人情報が漏えいしたターゲット社の事例
ターゲット社という企業をご存知でしょうか。アメリカで第5位の流通小売り大手企業ですが、2013年にCEOであったグレッグ・スタインハーフェル氏が取締役会で解任されました。
厳しいビジネスの最前線で6年間もトップを務めてきた、筋金入りの経営者であるスタインハーフェル氏が解任された理由はただひとつ。ターゲット社が「空前の規模の情報漏えいに巻き込まれてしまった」ためです。
同社から漏えいした情報は、4000万件を超えるクレジットカード情報と、7000万件もの住所や電話番号などの個人情報、と市場稀に見る巨大かつ深刻な規模でした。
この情報漏えいは欧米諸国の経営者層に大きな衝撃を与えました。情報漏えいの直接的原因は「ハッカーによる攻撃」であり、珍しくないのですが、彼らの攻撃目標はターゲット社ではなく、ターゲット社の下請の空調設備会社だったのです。
ターゲット社のオフィシャルサイトに掲載されていた空調設備会社の従業員に狙いをつけ、フィッシングメールを送りつけ、「マルウェア」というウイルスソフトを忍び込ませることに成功。空調設備会社側からターゲット社のセキュリティをかいくぐってシステムに侵入し、情報を盗んでいったのです。
過去2年間で起きた最大の情報漏えいの被害額は6兆円超
VPNサービスを提供しているSurfcharkが発表した調査によると、2020年から2022年に起きた最大のデータ侵害の被害額は、以下の通りです。
1位/Advanced Info Service(AIS):約580億ドル
2位/Keepnet Labs:約348億ドル
3位/BlueKai:約139億ドル
4位/Comcast:約104億ドル
5位/Weibo:約37億ドル
1位はタイ最大の携帯電話会社であるAISで、2020年に86億件もの個人情報の流出があり、その被害額は日本円にすると6兆円超と換算されています。この額は、顧客の喪失、評判の低下による喪失、法定費用、罰金、補償の回復と改善にかかるコスト、株価の下落などから計算されています。情報漏えいにおける企業のリスクの高さを痛感する数字となっています。
(参考:Surfshark「Cost of Data Breach - Surfshark」)
ハッカーなどネット上のサイバー攻撃は、あの手この手で企業や政府のセキュリティを乗り越えようとします。さらにセキュリティが強化されると、一層巧妙で悪質な手口が生まれるいたちごっこ、悪循環にあります。