はじめに

少子高齢化で着々と人手が減少している日本では、企業の業務改善や業務効率化が急務となっています。とくに新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、テレワークの導入が急速に進んでいるからこそ、これまで当たり前のようにオフラインで行っていた業務の改善が必要です。

しかし、業務改善のため現状整理を行う際、誰がどのようなタスクをどのように進めているかを調べるのは非常に大変です。抜け漏れなく実施するには多大なリサーチ工数がかかる一方で、単に工数を削って調査すると抜け漏れが発生しやすくなり、結果として手戻りにつながってしまうリスクもあります。

そこで注目されているのが「ECRS(イクルス)の原則」です。本記事では、このECRSの原則について、概要や活用のメリット、使用上の注意点、そして実際の事例について、それぞれ解説していきます。

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ECRSの原則とは

ECRSの原則とは

ECRSとは「Eliminate(排除:取り除く)」「Combine(結合:つなげる)」「Rearrange(交換:組み替える)」「Simplify(簡素:簡素化する)」の頭文字をつなげたもので、この4要素の視点から、既存業務の改善ポイントを洗い出すフレームワークをいいます。

ECRSの原則では、それぞれの要素を「E→C→R→S」の順番で実施していくことが重要です。一つずつ見ていきましょう。

Eliminate(排除:取り除く)

まずは、「該当の業務をなくせないか」のように、業務そのものの排除を検討します。

日々のルーティン業務に追われていると、そもそもその業務は必要なのかを改めて考えるシーンは意外と少ないのではないでしょうか。その業務が発生した直後は必要でも、時間の経過とともに環境も変化し、改めて見直すと実は不要だった業務は少なくありません。

たとえば以下のようなケースが、Eliminateの対象となりえます。

  • 毎週固定で開催される定例会
    →メールや報告書での共有とし、会議は月に1回とする
  • 複数の上長承認が必要なワークフロー
    →直属の上司の承認のみを必要とするフローに変更し、承認にかかる時間を削減する
  • 毎朝行っている朝礼や日報の提出
    →月曜と金曜の週2回の実施都市、時間コストを減らす

Combine(結合:つなげる)

次に、「別々に行っている業務を一つにまとめられないか」など、複数業務の結合(Combine)を検討します。

とくに、お互いの業務の状況が見えない部署間で、同じような業務を行っていたといったケースは少なくありません。実現には部署間の業務理解と連携が必要不可欠といえるでしょう。

たとえば、以下のようなケースもCombineの対象となりえます。

  • 複数部署が入る共有会の前に、部署ごとに行っていた共有会
    →初めから複数部署での共有会を実施する
  • 要件ごとに個別メールを送る
    →関係者のメーリングリストを作成し、一括送信する
  • 同じデータを用いながら、部署ごとに作成している管理表
    →部署横断でひとつにまとめる

Rearrange(交換・再配置:組み替える)

続いて、「この業務は別の方法で行う」「作業手順を入れ替える」など、業務の代替案や順番の見直しを検討します。

業務を洗い出したうえで排除や結合が難しい業務は、代替できるやり方を探したり、優先度や手順を変えたりすることで効率が上がる場合も多いものです。簡単な例としては、資料のテンプレート化です。毎回まっさらなパワーポイントで資料を作るよりも、あらかじめテンプレートを用意しておくことで、資料作成工数は格段に少なくなるでしょう。

たとえば、以下のような部門をまたがった業務の集約・移管ケースも、Rearrangeの対象となり得ます。

  • 提案資料は完成してから上長に確認する
    →たたきの段階で確認し、修正コストを減らす
  • 支社から本社へ従業員を収集して会議を行う
    →本社と支社のやり取りはビデオチャットツールを使用し移動時間とコストを削減する
  • アポイントが入った順番に訪問営業を行う
    →効率よく回れる営業ルートに見直し移動時間を削減する

Simplify(簡素:簡素化する)

最後に、「もっと業務をシンプルにできないか」など、業務の簡素化を検討します。

とくに長期間同じやり方を踏襲している業務は、効率が悪く無駄な工数が発生している場合も少なくありません。最新のテクノロジーを活用するなどして、業務時間や量を減らすことができないか考えてみましょう。

たとえば、以下のようなケースがSimplifyの対象となりえます。

  • 議事録はローカルで作成し関係者に共有後、齟齬があれば修正する
    →クラウドのドキュメントツールで作成し、会議中に内容のチェックと振り返りを可能にする
  • 従業員間のやり取りはメールで行う
    →コミュニケーションツールとしてチャットを導入し、ライトなやり取りにより連絡スピードを改善する
  • 経費計算はExcelで行う
    →会計ソフトを導入し、自動月次集計機能を利用する

ECRSによる業務改善に取り組むメリット

ECRSによる業務改善に取り組むメリット

コスト削減効果の最大化

やみくもに業務改善に着手すると、どうしても抜け漏れや重複が起きやすくなります。ECRSはE→C→R→Sの順に業務改善効果が高くなるフレームワークです。順番に業務を見直すことで、リソースを抑えながらコスト削減の効果を最大化できます。

生産性向上

ECRSでは既存の業務を洗い出し、必要性や妥当性を判断するため、最終的には本当に必要な業務だけが残ります。従業員はこれまでと同じ成果は出しつつ業務量や時間は減らせるので、会社全体の生産性向上が期待できるでしょう。

情報共有の迅速化

チャットなどコミュニケーションツールの導入により、従業員同士やクライアントとの情報伝達スピードが向上します。あわせて、個別連絡を一括連絡へ変更するなどの対応で認識齟齬の解消にもつながるでしょう。

属人化の防止

とくにSimplifyによって簡素化することで、業務が標準化され誰が行っても同じ成果を出せるようになります。結果的に属人化の解消や防止につながるのです。

ECRSによる業務改善の注意点

ECRSによる業務改善の注意点

ECRSの原則には多くのメリットがある一方で、注意点もあります。以下3点についてご説明します。

目標と方法を明確にする

ECRSによる業務改善を実施する場合、必ず目的と達成のための方法を明確にします。たとえば目的を単純に「残業を少なくする」と定め、具体的な方法が共有されなかったとしたら、業務が終わっていない状態で退社し、持ち帰り仕事をする従業員も発生するでしょう。

残業時間を減らしたいのであれば、「残業時間を一人あたり〇時間減らす」と具体的に定め、そのためにECRSに沿ってどのようなアクションを行うべきかまで共有が必要です。

関係部署間で連携して行う

多くの業務は、自部署だけでは完結しないため、関係部署が変わらなければ本質的な業務改善は難しいといえます。業務改善に取り組む際は、自部署にとどまって進めるのではなく、関わる部署や必要に応じて取引先とも意識を合わせたうえで実施しましょう。

古参従業員の扱いに注意

長年勤めている従業員は、業務が属人化していたり独自の仕事の進め方を持っていたりと、業務改善を進めるうえでボトルネックになるケースがしばしば見られます。保守的な考えでなかなか業務改善に応じてもらえないケースもあるため、周囲にも協力してもらいながら属人化の解消に努めていきましょう。

ツール導入による業務改善の成功事例

ツール導入による業務改善の成功事例

あすか製薬株式会社

課題

甲状腺低下症治療薬市場でシェア95%以上を占める「チラーヂン」を主力製品として展開するあすか製薬株式会社では、MRの業務効率を期待してiPadと携帯電話、パソコンを支給していましたが、十分に活用されておらず社内の情報共有が円滑に進まないことが課題になっていました。

対策

そこで、新たな社内コミュニケーションツールとして「LINE WORKS」を導入しました。導入後はチャット特有のシンプルでスピーディーなやり取りや、既読機能確認による未読者へのリマインドなどが可能となり、MRと営業所内勤者との情報共有の円滑化が実現しました。

また並行して、MRへの貸与端末を「iPad・携帯電話・パソコン」から「iPhone・パソコン」に切り替え、あわせてオンデマンドVPNによる自動接続を実現したことから、利便性が格段に向上してデバイス活用率も向上しました。

株式会社ジェイ・シー・エス

課題

エステサロンや美容クリニック向けの信販事務代行やクレジットカード決済、集金代行などを展開する株式会社ジェイ・シー・エスでは、導入していたグループウェアがうまく活用されず、営業部と業務部との情報共有に課題があってミスやトラブルの原因となっていました。たとえば日報はExcel管理となっていたので、参照コストが非常に高い状態でした。

対策

そこで、クラウド型CRMプラットフォームである「Salesforce」を導入し、情報共有の促進と業務全体の効率化を目指しました。具体的には、Excel日報や手書きノートで管理していた顧客情報をSalesforceへと集約し、コミュニケーションツールとして「Chatter」を活用したのです。

結果的に20%の業務効率化に成功しました。今後はさらなる業務改善を図り、現行8時間の所定労働時間を、6時間まで短縮することを目指しています。

事例詳細については、こちらをご覧ください。

E→C→R→Sの順番で効率よく行うことが大切

今回は業務改善フレームワークであるECRSの原則について、概要やメリット、実施する際の注意点、そして実際の事例について、それぞれご紹介していきました。注意点を意識しながら、E→C→R→Sの順番で業務効率効果の最大化を目指しましょう。

業務改善を図るうえで、ツールの導入は大きな効果をもたらします。コネクシオでは、業務を効率化するさまざまな支援ツールを取り揃えています。企業ごとの課題に合わせて最適な提案が可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

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