はじめに

ここ数年で、ノートパソコンやタブレット、スマートフォンといった個人所有デバイスを業務に活用するケースが増えてきました。通称「BYOD(Bring Your Own Device)」と呼ばれるこれらのトレンドは、従業員の生産性を向上させ、働き方改革につながる有効な施策として機能します。

一方で一歩間違えれば、情報漏洩などのセキュリティ事故につながる可能性があることも忘れてはいけません。

本記事では、BYODを導入するメリット・デメリットについて解説した後に、MDMの活用をはじめとするセキュリティ対策など、BYOD導入時におさえておきたいポイントを紹介していきます。

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「BYOD」とは?

「BYOD」とは?

BYODとは “Bring Your Own Device” の略称で、個人が所有する各種デバイスを業務用途で活用することを示す言葉です。

かつては業務でパソコンなどを活用する際、会社が用意したデバイスにソフトウェアやアプリケーションをインストールしてそのまま使用するケースが一般的でした。そのため、スペックが限られた個人用デバイスを業務で使用する機会はほとんどなかったのです。

しかし、ここ数年でクラウドサービスは急速に発達。デバイスのスペックに左右されずに、ブラウザベースで業務用ソフトウェアやアプリケーションを活用できるようになりました。加えて個人の所有するデバイスのスペックも向上したことなどが、BYOD普及の背景としてあげられます。

日本国内のBYOD普及率は10.5%

総務省が毎年発表している「情報通信白書」の平成30年版によると、BYODを導入している企業は10.5%にとどまっています。

以下図の通り、この数値は諸外国と比べても低いことがわかります。一方でPCの利用率は突出して高く、業務へのPC活用は広く普及しているものの、BYODについては許可していない企業が多い結果となりました。

情報通信白書 平成30年版

参考:総務省「情報通信白書 平成30年版

BYODの許可については、ドイツが27.9%、英国が27.8%、米国が23.3%なのに対し、日本は10.5%となっている

BYOD導入のメリットとデメリット

BYOD導入のメリットとデメリット

日本では2012年前後にBYODが話題となりましたが、それから10年強が経過しても、いまだに普及が進んでいるとは言えません。ここでは、BYODのメリットとあわせて、懸念されるデメリットについてもお伝えします。

BYODのメリット

まず、BYODを導入するメリットとしては、以下の4点があげられます。


業務効率の向上

端末のメーカーやOSによって同じ作業でも仕様は少しずつ異なり、慣れるまでに一定の時間を要します。BYODでは従業員が普段から使っている自端末を使用できるので、使い方を迷うことがなく業務の効率化による生産性向上が期待できます。


従業員満足度の向上

上述の業務効率化に付随して、BYODでは端末の使用方法を確認する必要がなくスムーズに作業が進むので、労働時間の短縮が期待できます。副次的な効果として従業員満足度の向上にもつながるでしょう。


運用コストの削減

都度、企業からデバイスを配布するのは、配布時のイニシャルコストはもちろん、適切に運用するためのランニングコストも必要です。また、デバイスを用意する手間も発生するでしょう。

BYODを導入することで、これらのコストや手間を大幅に減らすことができます。


シャドーITの防止

シャドーITとは会社が把握していないところで、従業員が自分のデバイスやアプリケーションなどを業務に使うことです。シャドーITは会社情報の漏洩や端末のウイルス感染、それに伴う不正アクセスなどが起こる可能性が格段に高まります。

BYODは従業員が個人デバイスを使用する点では同じですが、それを企業側で把握、管理しているので、シャドーITによるリスクの防止が期待できます。


BYODのデメリット

BYOD導入にはデメリットも存在します。以下、4点について確認していきましょう。


社員のオンオフ切り替えが難しい

個人の所有端末を業務利用可能にすると、業務時間内、時間外の境目があいまいになりやすいと言えます。場合によっては、業務時間外や休日でも業務に関するメールやチャットを見てしまう、通知が来ると身構えてしまうなど、業務時間外であっても心身ともに休まらない従業員が発生することもあるでしょう。


労務管理が難しくなる

企業側では、個人の労務管理が複雑化するデメリットも。タイムカードやオフィス内での打刻であれば、ある程度の業務稼働状況を確認できます。一方で個人端末を使う場合、どこまでが業務でどこまでが私用かを把握しづらく、業務時間の管理や妥当性判断が難しくなるのです。

正確な労務管理を実施するには、パソコン起動時の稼働アプリケーション状況のログ解析などが必要となるでしょう。ただし、これを行うと今度は従業員のプライバシー侵害にもつながりかねないため注意しなければなりません。


セキュリティ管理が必要になる

BYOD導入にはより厳格なセキュリティ管理が必要になります。とくにネットワーク許可に関する設定は細かく管理し、各種セキュリティリスクが発生しないような対策を講ずることが不可欠です。


ルールの策定や教育コストがかかる

上記のような理由からBYODの導入には、細やかなルールの策定や従業員教育が欠かせません。従業員が安心して働ける環境を作るため、またセキュリティリスクを減らすためにも、ルール策定と従業員への伝播には一定のコストが必要です。

BYOD導入時におさえておきたいポイント

BYOD導入時におさえておきたいポイント

ここまで見てきたメリット・デメリットに鑑みて、BYOD導入にあたっておさえておきたいポイントを解説します。


社内ガイドラインの作成、運用

まずはBYODを導入するにあたって、社内のガイドラインを整備しましょう。

業務利用を許可する端末にどのようなアプリケーションをインストールして良いのか、どこまでの情報をどの粒度で会社サイドで保護するのか。このような各種ルールを明示したガイドラインを設けることで、セキュリティ事故の未然防止はもちろん、万が一事故が発生した場合の迅速な対応にもつながります。

また、上述したガイドラインは策定するだけでは意味がありません。それを適切に従業員へと伝え、社内文化として浸透させてこそ、はじめて効果を発揮します。

そのためにも、すべての従業員が把握できるようなわかりやすく明確なルールを策定し、それをどのように従業員に浸透させていくかまでを考えることが重要なアクションです。


従業員へのセキュリティ意識向上の教育

どんなにルールを明確化し、わかりやすくしたとしても、それを守る従業員のセキュリティ意識が希薄だと、セキュリティ事故発生のリスクは依然として高いままです。

従業員のセキュリティ意識を向上させるための教育として、eラーニングシステムを活用した教育コンテンツの配信や、集合研修・ワークショップ等を通じての継続的な教育も必要となります。


MDM(モバイルデバイス管理)の導入

ここまで見てきた運用面での施策の他に、MDMによるシステム的な管理・監視対応も、BYOD導入時に検討しても良いでしょう。

MDMとは “Mobile Device Management” の略称で、ビジネスで利用する各種デバイスを管理するシステムやツール、ソリューションのことです。日本語では「モバイルデバイス管理」とも訳されます。

BYODデバイスの管理に伴う各種コストを削減し、情報漏洩対策としても有効に機能することが期待されるでしょう。

関連記事:MDM(モバイルデバイス管理)とは? EMM、MCM、MAMとの違いとともに解説

社員のストレスにならず、コストに見合ったセキュリティ対策を行いましょう

今回はBYODを導入することのメリット・デメリット、および導入時におさえておきたいポイントについって解説しました。BYOD導入にはセキュリティ対策が必須であるほか、明確なガイドラインの策定と遵守も重要です。とくに、社員のストレスにならずコストに見合ったセキュリティ対策を行うことが、BYOD導入成功のポイントといえます。

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