ABWとは “Activity Based Working” の頭文字をつなげた造語で、時間や場所に縛られずに働けるワークスタイルを指す言葉です。
従来の就業を考えてみると、大半の企業では固定のオフィスへと物理的に通勤し、そこで就業するというスタイルでした。
それに対してABWでは、個人やチームが置かれた状況等に応じて柔軟に働く場所と時間を選択することができるワークスタイルとなります。一人で集中し作業したいときは在宅勤務やコワーキングスペースにあるワーキングブースで働き、チームでブレストをしたい場合はオフィスの中規模会議室で実施して、メールの返信などの雑務はカフェラウンジで行う。
そんな働き方を推奨するのがABWというわけです。
ABWは個々の裁量を最大化する働き方
このABWのコンセプトが最初に提唱されたのは、40年近く前の1985年です。ハーバード・ビジネス・レビューに「Your office is where are」と呼ばれる論文が掲載され、そこで統合的ワークプレイス戦略の概要が語られたのです。
それから5年後、この論文で提唱された働き方を「ABW」としてパッケージングし、1990年より導入支援サービスを展開しているのがオランダのVeldhoen+Company社(以下、ヴェルデホーエン社)です。同社では、クライアントのABW戦略の策定はもちろん、ボードメンバーを含む全従業員向けのリーダーシッププログラムや物理的環境のコンサルティングなど、様々な観点でワークプレイスの戦略的な活用を推進してきました。
文字通り、従業員が個々の活動(Activity)によって自律的に働く場を選択し、それにふさわしい場を企業が用意するという意味で、一人ひとりの裁量を最大化する働き方と言えます。
その先進性と重要性を認識し、ABWは現在、ヴェルデホーエン社のクライアントはもちろん、多くの海外企業が導入している仕組みとなっています。
フリーアドレスやリモートワークとの違い
ABWとよく間違われるのが、フリーアドレスやリモートワークです。
フリーアドレスはオフィスの執務スペース内であれば自由に働く場所を選べる制度を指します。つまり、あくまでオフィスという物理空間内での自由度を担保する就業制度となります。
またリモートワークは、在宅や外出先など、働く「場所」を自由に選べる制度を指します。オフィスはもちろん、自宅やコワーキングスペースなど、働くのに適した様々な場所と連携していくことになります。
これに対してABWは、場所のみならず時間も含めて、社内外問わず、働く人の活動に応じて好きな場所で働ける制度を指します。
前述のヴェルデホーエン社によると、ABWは企業の経営戦略を実行するためのツールの一つであって、画一的な働き方を定義するものではないとのこと。つまり、ABWは企業によってそのあり方がまちまちだということです。