働き方改革とは? 背景と目的、これからの課題。DXとコロナ禍の対応を考える
企業は生産性を追求する一方で、育児や介護に携わる従業員でもより働きやすくなる制度など、ワークライフバランスと場所や時間に制限されない多様な働き方を実現しなくてはいけません。
この記事では、DXやコロナ禍の変化を交えながら、改めて働き方改革を振り返り、今後の課題と解決策についてお伝えします。
2019年4月1日に働き方改革関連法案の一部が施行されました。施行以前より、日本の少子高齢化に伴う、生産年齢人口の現象や一人当たり労働生産性の低さ、育児や介護の両立など働き手のニーズの多様化が指摘されていました。
厚生労働省のホームページには、働き方改革がそのような課題を解決して、目指す先を、以下のように記載しています。
この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
引用元:厚生労働省「働き方改革の実現に向けて」
「1億総活躍社会」というスローガンが掲げられたことも記憶に新しいでしょう。働き方改革の課題は、多岐にわたりますが、企業に対応が求められていることを大きく3つに分けて、振り返ります。
大きな目的の一つは長時間労働の削減に伴う、労働者の健康と安全の確保。それに伴う労働生産性の向上、そして意欲的かつ持続可能な働き方をつづけられるワークライフバランスの実現です。
無駄をなくし、業務効率を向上することで、一人当たりの労働生産性を上げ、長時間労働を是正。労働者一人ひとりの賃金やワークライフバランスの実現を目指しています。
ここに関連する法改正や制度は以下の通りです。
【日本で関連する法改正と企業に求められる制度】
など
非正規雇用と正規雇用の格差は拡大しています。2020年の総務省「労働力調査」によると、正規雇用の役員を除く雇用者に占める割合は、62.9%。非正規雇用は37.1%です。
また2020年の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、正規雇用の賃金を100とした場合、非正規雇用の賃金は男性で68.5、女性で71.8となっています。
処遇の改善はもちろんですが、ライフステージにあった仕事の選択がしにくい単線型の日本のキャリアパスの変更、企業・行政による人材育成、復職支援、再就職支援などのフォローアップが求められています。
ここに関連する法改正や制度は以下の通りです。
【日本で関連する法改正と企業に求められる制度】
など
もう一つは、避けられない未来である労働生産人口の減少に対して、外国人材や高齢者、障がい者など多様な人材が活躍できるような環境整備。そして、ライフステージの変化があっても柔軟で多様性のある働き方の実現です。
【日本で関連する法改正と企業に求められる制度】
など
このように働き方改革は、日本の社会構造や従来型のシステムを根本的に変えることを目的としています。企業は法律への対応、企業の就業規則を含めた制度変更が必要で、実現をするためにはデジタルツール・ソリューションの導入が欠かせません。
このような背景に加え、新型コロナウイルスの感染拡大により、従業員の健康と安全を自然災害やパンデミックから守り、経済活動のスピードを緩めずに成長することも求められています。
奇しくもコロナ禍で急速にテレワークは普及していき、多くの業界・業種でも業務フローにおけるDXが加速しています。現状では、働き方改革というキーワードはDXやポストコロナ、withコロナへの対応に置き換わりつつありますが、前述した日本の社会構造への課題は解決したわけではありません。働き方改革やDXは両輪で進めていかなくてはいけません。
生産性向上や業務効率は、いつの時代においても企業経営における課題です。現在ではデジタル活用により、業務課題の解決や業務フロー上の変革が起きています。
デジタル技術の革新は日進月歩ですので、AIやIoTなど各業界、業種で様々なサービスが展開されており、事例は多くあります。
もっとも身近な例は、モバイルデバイスと通信技術を利用したテレワークですが、勤怠管理やワークフローもクラウド化することで、業務効率を向上できますし、在宅でオフィスと変わらない労働環境が構築できれば、育児や・介護との両立が可能となります。
またテレワークが浸透することで、紙に頼っていた業務フローなどはデータ化され、ペーパーレスが促進されます。同時に移動時間も削減されるので、空いた時間を他の作業に充てるなど生産性も向上し、結果としてワークライフバランスの実現にもつながります。
次に働き方改革やDXの推進、着手が進まない原因をまとめます。
もっとも大きな要因は経営陣の現状に対する危機意識の欠如、もしくは危機感があっても知識や理解が薄く具体的な解決策を明示できないケースです。また経営層がビジョンを持っていても、現場の意識と乖離がある場合も同様です。本来的な目的意識を全社で共有されていなければ、働き方改革もDXも進みません。
まずは経営層が現場でのヒアリングを徹底し、業務課題を洗い出し、目的やビジョンをメッセージングしていくことが望まれます。
働き方改革やDXを実現するにあたり、専門人材がいなく、推進ができないケースも多くあります。現在の採用市場では専門人材の獲得は難しく、危機感があり、ビジョンがあっても具体化していく段階で手詰まりになってしまいます。働き方やDXを推進するにあたり、無理に社内で完結しようとせず、包括的なサービスを提供している外部業者を検討する必要もあります。
せっかく働き方改革で新たな制度を設けたのに、上司が制度の利用に前向きでなかったり、まったく利用しなかったりすると、部下が制度を利用しにくくなってしまう場合があります。オフィス全体にこのような雰囲気が広がってしまうと、結局は誰も制度を利用できず、働き方改革が浸透しません。
またデジタルツール・ソリューションに関しても同様です。課題解決のために導入に踏み切っても、現場で利用されなくては効果を期待できません。
働き方改革、DXとともに経営課題としてあげられるのがSDGs、サステナビリティ、ESGです。
2030年までに実現する持続可能な社会に向けて、見えない企業価値(非財務情報)も重要視されています。
SDGsが掲げる17の目標でも「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「働きがいも経済成長も」があり、169のターゲットの中にも生涯学習の機会を促進すること、同一労働同一賃金が明確に定められています。同時に持続可能かつ多様な人材の雇用と、活躍できる環境整備が求められます。
働き方改革の各項目で捉えてしまうと、長時間労働削減などの対策にフォーカスしてしまいがちですが、改めて大きな視点で目的を見直すと世界的な潮流の動きの一部であることがわかります。
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