はじめに
コネクシオでは2021年夏より、Google WorkspaceからMicrosoft 365への移行を段階的に行っている。
今回は情報システム部のプロジェクトメンバーに、導入の背景や、選定プロセスなどをインタビュー形式でお届けする。
リプレイスをご検討中の企業様にとって、何らかの道しるべになれば幸甚である。
サマリ
- 多様なクラウドサービスの利便性向上とともに、管理運用の負担が増大していた
- 今後、さらに増えていくIT利活用と、管理・コストの抑制を両立できるのか
- モバイルを利活用しモバイルワークプレイスを体現しながら、セキュリティ対策も重要
- 利便性の向上と管理コストの削減を両立できるMicrosoft 365
- 当社が提唱するモバイルワークプレイスの実現に適している
- 現在のコストだけでなく、今後増えていくサービスへの対応も勘案
- Microsoft 365
導入プロジェクトメンバー紹介
コネクシオ株式会社 情報システム部門
- 左から情報システム部 山田伸二 部長代行、情報システム部メンバー 桒原佑騎さん、清水桜さん
- 多数のプロジェクトメンバーから、今回は3名を紹介
- URL:https://www.conexio.co.jp/
インタビュー
リプレイスを選択した背景・課題
さらに「いつでも、どこでも同じように働ける」環境を目指し、Microsoft 365へのリプレイスを決断
現在、コネクシオでは情報システム部が主管となり、Microsoft 365へのリプレイスを行っている。背景となっていた課題、リプレイスの経緯について 情報システム部 部長代行 山田伸二にインタビューを行った。
「現在は一部の部門に"ドッグフーディング”としてアカウントを配布し、日常的な利用を開始しています。その後、利用者と機能を追加しながら全従業員に配布という段階的導入を行っています。現在は、登山で言えば5合目といったところです。」(山田)
「ここ数年でIT環境は大きく進化し、各事業や部門ごとに異なる局所的なクラウドサービスの導入が増えてきました。これにより仕事の利便性が大きくアップし、働き方の多様性も広がりました。
これ自体は、マイクロサービスという観点としてはとても良いことだと捉えています。(※)
その一方で、各サービスは必ずしも連携されておらず、結果としてそれぞれ異なる管理や手動での情報連携が必要だったり……と、私たちシステムを運用・管理する立場では、管理コストや稼働が無視できないものに増大していました。」(山田)
- マイクロサービス:用途・目的ごとに開発された小さな(マイクロな)サービスの組み合わせにより、時代の急激な変化に対応できる、柔軟性の高いアプリケーションができるという概念
その課題の解決として、Microsoft 365へのリプレイスが候補に浮上したと山田は振り返る。
「“IT活用により出来ることを増やしたい・間接業務を楽にしたい”という要望と、“サービスを入れる度に管理コストや連携コストが増えるのは抑制したい”という要望を、何とかして両立させたい。
これを考えたときに、“Microsoft 365という単一プラットフォーム上で出来ることは沢山あるのでは”という考えに至りました。」(山田)
選定プロセス
ITでできることを増やしながら、管理コストや連携コストを抑制できるのがMicrosoft 365
「導入検討時に、主に重視していたのは以下3点です。」(山田)
- ①Google Workspaceで利用しているサービスと同等のサービスがあること
- ②今後、社内の業務環境を鑑みた上でも利活用が見込めるサービスがあること
- ③セキュリティを担保しつつ、モバイル活用が見込めるサービスがあること
①Google Workspaceで利用しているサービスと同等のサービスがあること
「当社は2011年からGoogle Workspaceを全社的に利用していました。Google Workspace利用サービスの骨幹は、メール・スケジュール・社内ポータルといった、いわゆるグループウエアです。
そのため、それらの機能が充足していることが最優先でした。結論でいえば、問題なく充足しています。みんなGoogleを使い慣れているので、最初は使い勝手で多少の戸惑いがあるのは避けられないですが。
10年間利用してきたGoogle Workspaceに豊富な機能があることはもちろん認識していました。
しかし、Microsoft 365の製品群の多様さ、例えばコミュニケーションでTeamsに比肩するものはないと認識しています。 加えて、既存のActiveDirectoryの資源活用という点でも、Microsoft 365ならば連続性を持たせることが出来ると考えました。 ユーザ目線でも、管理者目線でも、これからイチから考えなくていいという点はとても大きなメリットです。」(山田)
②今後の当社の業務環境を鑑みた上で、利活用が見込めるサービスがあること
「Microsoft 365が単なるグループウエアに留まらないものであることは認識していました。オプション料金が掛かるものもありますが、色々なサービスがバンドルされています。とはいえ、それらに直ぐに飛び付いたわけではありません。
便利なサービスがあっても、業務内容、職務環境、さらには企業風土等を鑑みて、活用できるかどうかはしっかり検討する必要があります。“デスクワークの社員はテレワークが定着している”、“店舗では出勤は必須であり、PCに向かう時間も限られている”、“ペーパーレスの観点では既に社内ドキュメントの大半がデジタル化されている”等々。
コネクシオでは店舗・内勤・営業等、業務によってワークスタイルは大きく異なります。
当社なりの置かれた環境を踏まえつつ、それでも活用できそうなサービスがあるか?というスタンスで検討した結果、メリットが見込めると判断しました。」(山田)
③モバイル活用をこれまで以上に推進しながら、セキュリティを担保できるサービスであること
「この点が、最も大きなポイントでした。
当社は携帯電話の販売を主業とし、自らもモバイルを利活用する新しい働き方“モバイルワークプレイス”の体現者でありたい。
今後も、“どこでも働ける環境”モバイルワークプレイスは必須であり、それにはPCのみならず、モバイルの利活用は同義語として必須と認識しています。と同時に、セキュリティ脅威も増していることから、対応施策のレベルを上げる必要があると認識していました。」(山田)
コロナ禍の影響を小さく食いとどめた【モバイルワークプレイス】
コネクシオでは「働き方改革」に約5年前から対応していたことから、コロナ禍でも影響を小さく食いとどめることができた。いまや、コネクシオでの働き方は今やモバイル活用抜きでは全く考えられないと山田は語る。
「当社は5年前と比較的早い段階で“働き方改革”に対応をしていました。
具体的には、PCを社外に持ちだしての業務が可能な環境および運用を構築していました。 それに加え、モバイルデバイスでもメール・スケジュール・ファイルアクセス等々の利用も出来る環境を実現していました。
このため、コロナ禍でのテレワーク移行も混乱なく進み、影響を小さく食いとどめることができました。」(山田)
モバイル活用にあたっての、Microsoft 365のメリットを聞いた。
「一言で言うとIntuneを使えることです。 セキュリティ対策がしっかりと行え、安全な環境でモバイルを利用できます。Intuneにはデバイス制御機能のMDMとアプリケーション制御機能のMAMが組み合わせで使えるため、社内のセキュリティポリシーに則った総合的な制御と管理を行なうことができます。
BYODについても、現在はセキュアブラウザを使った社内情報へのアクセスは実現していますが、より便利な使い方を検討しています。」(山田)
将来まで見据えたコストで比較検討
冒頭に挙げたコストの課題についても検討を行った上で、Microsoft 365を選定した。
「Microsoft 365は、コスト的には決して安価とは言い切れません。しかし、これを導入することによって統合が見込めるサービスのコスト、これから掛かるであろう新たなサービスのコストまで鑑みれば、最終的にはバランスできると判断しました。」(山田)
他の比較検討製品
「“メール・カレンダー・ポータル”を実現するグループウェアという意味だけであれば、検討製品は多々あります。 しかし、先ほど述べた背景と検討ポイントを加味すると、GoogleかMicrosoft 365の選択に絞られます。
さらにモバイル活用の観点を加味すると、Microsoft 365一択になりました。 当社は約7,000IDの利用者がおり、セキュリティ面も確保したい、人事異動・組織改編のボリュームも大きい。やはり、Microsoft 365という選択になりました。」(山田)
導入スケジュール
導入スケジュール
「既存のGoogle Workspace利用と並行しながら、2021年7月から2022年4月まで、約9か月をかけて、段階的に移行を進めています。」
【全体スケジュール】
2021年07月 移行担当者にアカウント配布
2021年07月 法人本部800名にドッグフーディング(日常的な利用)開始
2021年10月 全社員にアカウントを付与(Office Online・OneDrive・Teamsの実運用開始)
2021年11月 社内ポータルを全てGoogleサイトベース⇒Sharepointベースにリプレース
2021年11月 Outlookカレンダー利用開始 (※)
2022年01月 Outlook全機能利用開始
2021年01月 個人データ移行開始(3月まで)
- 2022年1月に本社移転を行うため、移転前後のスケジュール管理のためカレンダー機能を優先して開放した
導入におけるエピソード
導入におけるエピソード
現状では一部の部門への導入を終えた段階であり、まだ「5合目」と語る山田に、ここまでの留意点や気づいた点を訊いた。
「ここまでで気を付けた点としては“段階導入”につきます。
例えば利用者については、
- 情報システム部内の一部にアカウント配布
- 法人本部800名にアカウント配布
- 全従業員に配布
といった段階で配布して、初見による混乱の緩和と、実際利用を始めたことによって出てくる課題の対処を順次行いました。
利用者の段階的拡充に加えて、機能も順次拡充、ライセンスも順次アップグレードと、すべての観点で段階導入の手法を取っています。
苦労した点としては、段階導入ゆえに“○月○日までにアカウント精査して登録しなければ”、“△月△日までにこの機能のリリースをしなければ”とイベントタイミングが増えることになりました。
また、全社に先駆けて導入した法人本部には色々と労力を掛けました。
しかし、段階導入のメリットはそれらを上回るものです。
一気に切り替える手法に比べれば、業務混乱は抑えられますし、最初からフル機能を持っていても使わない = ライセンスコストの無駄、という状況も避けられます。業務的にも会社のお財布的にも比較的柔らかい手法だったと思います。
また、Microsoft 365導入においてカバーすべき影響範囲は相当に広く、ライセンス管理・各種機能検証・社内ポータル刷新・社内告知&教育・デバイス利用検討・AAD構築等々……あります。性急な導入をした場合には検討不足や、対応時間の不足等による致命的なトラブルを招いていた可能性もあり、段階導入が現実的な方法だったと思っています。」(山田)
導入効果・今後の展開
コスト効果
「我々には今後、全従業員に使い倒してもらい、業務効率向上につなげるというミッションがあります。コスト効果・定量効果についてはその後、どれだけ利活用できるかによる部分もあるのですが、導入規模でいえば、
Microsoft 365 E3ライセンス × 約2,000
Microsoft 365 F3ライセンス × 約5,000 となります。
コスト的には、グループウエア範囲の総トータルコスト10~15%低減 、これ以外にMicrosoft 365によって代替できそうな既存ソリューションコストの削減で数10Mを見込んでいます。」(山田)
今後の展開・期待
「各種アプリの本格的な検証はこれからのフェーズになりますが、
- ToDo, Lists, Planner等:すぐに使い始めることが出来る便利機能
- Stream:動画コンテンツでの情報共有は既に活発に行なっているため、これも使える機能と見込んでいます
- Power Platform:業務処理の自動化や今後のデータ活用において期待しています。習熟に時間は要するかと思いますが、組織的な利活用のスキームを検討していきたいと考えています。 」(山田)
コスト的には、グループウエア範囲の総トータルコスト10~15%低減 、これ以外にMicrosoft 365によって代替できそうな既存ソリューションコストの削減で数10Mを見込んでいます。」(山田)
- 本取材内容、所属部署等は取材した2021年11月時点の情報です。
またコネクシオではMicrosoft 365の販売、導入支援を行っております。詳細はこちらをご確認ください。